2017年3月11日土曜日

平和について(『信長協奏曲』と『スター・トレックBeyond』感想)


ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ をやっと読んだのですが、美術部門やVFX部門など、本当に大変だったのだなぁと分かって、日本アカデミー賞で七冠を取ってくれて嬉しかったです。ああ、円盤の特典映像が見たい、NG集が、プリヴィズが、使われなかったあれこれのシーンが……。



で、この記事はそれとは別で、先月ロシアに行ったとき、アエロフロートで見た映画4本の感想です。テーマが「平和」と「パワー」でまとまっていたので。

まずは「平和」から。※ネタバレも含みます。

『信長協奏曲(コンツェルト)』と『スター・トレックBeyond』


原作漫画もドラマも知らないので、的外れなことを言っていたらごめんなさい。
とにかく見始めて数分で、口あんぐり。
だって、現代からタイムスリップした高校生の信長が、明智光秀を「ミッチー」、秀吉を「サルくん」って呼ぶんだもん。
歴史を扱った作品もここまで自由になったのか……!!
タイムスリップものなのに歴史改変とか全く気にしてないし!
世代が上の人、あるいは歴史小説が好きなら、「ミッチー」「サルくん」の驚愕を分かってもらえると思う。
ウィリアム・アダムスがスキューバの恰好で現れたときは、爆笑しましたw
女性にウケる要素もたっぷり。江戸時代にウェディングケーキって!



でも、この映画は、「平和な世界」 というテーマで、一本筋が通っていると思うんです。


つまり、こういうことです。

現代からタイムスリップした高校生は、戦国時代のように地域の諸侯が相争うことのない、平和な現代の日本を知っているので、「そういう世界って、ほんとにありえるんだよ。そういう時代が、いつか来るんだ」と、みんなに話して、自分でもそれを早く実現しようとしていく。

そして、史実に破れて死ぬときには(しかし、信長の最期を知らない高校生なんているんかいな)「この時代のみんな、後のことはしっかり頼んだよ。平和な世界は、いつか実現できるんだから」と、言い残して現代に戻っていく。

だけど、この最後のセリフ、いま、未来から2017年にタイムスリップしてきた人がいたとしても、同じようなことを言いそうじゃないですか……???

超ざっくりですが、歴史というのは異質な人たちのことを、だんだんに理解し、仲良くなっていく過程だと思うんです。日本列島も大昔は奈良盆地あたりで小さな部族間でゴチャゴチャ戦争していて、それからゆっくりと時間が進み、戦国大名くらいの大きな地域間の争いになりました。江戸時代の人々は、日本というより「〇〇藩」に所属しているという意識のほうが強かったんです。そして、幕府と討幕派が争って、やがて「みんな日本人だね」という意識が最近できあがった……。

いまはまだ、国と国同士がゴチャゴチャしてます。
でも、いずれは、「みんな地球人だね」になっていく。これは数年とか数十年ではないかもしれませんが、歴史はこの方向に必ず向かっていく。(その途中で核戦争で滅びなければ)
アメリカのミレニアル世代の若者の1/3は、自分を「アメリカ国民」より「グローバル市民」と考えている、という調査がありますけど。
アメリカの若者の国家観は親の世代とは大違い

やがて、古い世代が死に、新しい世代がそれに取って代わる。
古い世代が死に絶えるとき、徐々に偏見が消えていく。
人類は「地球人」になり、宇宙に出ていく。
そして、さらに長い時間が過ぎたのが、そう、

『スター・トレック』の世界 なのです。



これまた私は他のスター・トレック作品を見たことがないので、的外れなことを言っていたら、ほんとにすみません。
ただ、この『スター・トレックBeyond』という作品を見ると、もう軍隊は戦争するためにいるんじゃないんですね。宇宙を探索するため、新しい文明と仲良くなるためにいる。そして、この作品における敵は、なんと、いま現在いる、ゴリゴリのアメリカ軍人みたいな人なんです。(いや、アメリカ人じゃなくてもいいんだけど、いちおうアメリカ映画だからw)

「人類にはかつてのように、戦争と苦痛が必要なんだ。それによって人類は強くなれたんだーー!!!」とかいう元軍人。
そう思いつめるようになった理由(恨みつらみ)はあるんですけど。

いまの21世紀初頭にいたら、それほど目立たないでしょうが、これが『スター・トレック』の時代には、すっかり「時代錯誤の人」なんです(笑)。いまでいうと、「明治時代みたいな教育しないから日本は弱くなった」とかいう懐古主義の人みたいなものです。

それで、ネタバレは省きますが、最後にカーク船長が「人類はな、変われるんだよ!」と言うんです。戦争は人間の本性と思われていたけど、そうじゃない、変われたんだ、と。そのセリフを聞いて、私は直前に見ていた『信長協奏曲』を思い出して、考えこんでしまいました。


21世紀に人類が達成する、もっとも困難で、しかし、火星に行くよりずっとやりがいのあることは、「平和」を地球上にまで広げることなんだろうな、、、と。
21世紀にできなかったら、それは次の世紀の課題になるでしょうね。(核戦争で地球を破壊しなければ)


だから、『信長協奏曲』とこれを見終わって「結構、いい映画だったじゃん」と思ったんですが、そういうそばから、マレーシアの空港でひどい暗殺事件があったりして。

サブローみたいなのが2xxx年の未来からひょっこり現れて「大丈夫、この星もいずれ平和になるから。そういう世界は可能なんだよ。人類は変われるよ」って言ってくれたら、安心するのになー、なんて思ったことでした。
でも、それこそ、「この時代の人、後はよろしく頼んだよ」ですね。私たちこそが「この時代の人」なわけで。


長くなったので「パワー」の話は続きます。

『海よりもまだ深く』『JOY』で、パワーあるいは無力感の描き方が日米で180度違っていて面白かった、という話です。

パワーについて(『海よりもまだ深く』と『JOY』)